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本格的な高齢化社会を迎え「食」に対する人々の関心は多様化しつつあり、これまでの美味しさに加えて高い機能性が注目を集め、健康の維持増進が求められている。また、安全で安心な環境に対する意識も高まっていることから、資源を無駄なく、より自然に近い状態で有効活用することが重要といえる。
海洋生物にも多くの有用資源が含まれており、これまでも、エビやカニなどの甲殻類からのキチン・キトサン、鱗からコラーゲン、ホタテやイカの内臓からの魚油の回収など、多くの研究が行われてきた。その際、排出物を資源に変換し、排出物のゼロを目指す「ゼロエミッション」観点からもエネルギーの使用をできるだけ抑えた条件下で、水産物を丸ごと活用することが強く望まれる。
ところで、わが国には伝統的な水産加工業として、すり身製造が挙げられる。すり身を加工する際、すり身に必要なたんぱく質が除かれると、残滓として油脂を含む排液などが排出される。特にすり身排液からのドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)などの脂溶性有効成分の回収とそれによる排液の浄化は、環境保護を進める点で積極的に検討が期待されている(図1)。そこで私たちはこのすり身排液に着目し、有効資源として多量に含まれる「魚油」の効率的な回収法の開発を行った。
魚油中に多く含まれるDHAやEPAなどの多価不飽和脂肪酸は、制ガン作用、抗動脈硬化作用、抗血圧作用など、特徴的生理作用を有することが報告されており、生活習慣病の増加に伴い、益々健康志向が高まりを見せる中、各分野への利用が積極的に図られている。
DHAやEPAの主な供給源はイワシなどの魚油であり、これらの魚油は魚体を高温で蒸し煮する「煮取り法」と呼ばれる工程を経て工業的に製造されている。この煮取り法で得られた油はそのまま食用として用いることはできず、さらに熱を加えて脱色、脱臭といった精製処理を施さなければならない。ところが魚油に含まれるDHAやEPAは分子中に多くの二重結合を有するため非常に酸化されやすく不安定で、高温で処理することによって品質の低下を招く恐れがある。また繰り返し行われる精製処理によってDHA、EPA由来の共役不飽和脂肪酸やトランス酸などの副生成分が生じる可能性も高く、それによって栄養価も損なわれる恐れがある。
それに対し私たちが開発したすり身排液を利用した魚油の回収法では、冷凍魚を用いるため、すべての工程が10℃以下の低温で行われ、よって魚油の酸化安定性が非常に高く(図2)、DHAやEPAなどの機能性脂肪酸も比較的多く含まれることも明らかとなった(表1)。そこで本研究では、すり身排液から分離回収した低温油と、煮取り油より調製されている一般市販油を対照飼料として、ラットおよびマウスに投与し動物実験を行い、栄養機能性について検討を進めることにした。
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